生きて兆まで届く劣情

悶々と日々は続く

大都市の夢は続く劣情

今週のお題「マイルーティン」

なにか同じことを続けるということが、すこぶる苦手です。こんなふうにしてブログを書いているような方は、大抵継続力に溢れている方がほとんどなのではないかと思いますが、そういう方は本当に尊敬いたします。三日坊主という言葉がありますが、私に関しては三日も続けば上出来です。

そんな私にも毎日繰り返す習慣があります。

 

それは「腕時計を着ける」ということです。

 

平日の朝、自宅のドアを開ける前に必ず腕時計を着けます。

この腕時計は誕生日に頂いたもので、私が住んでいる田舎のショッピングモールの一角に店を構える時計屋さんに行き、自分で選んだ「ちょっといいやつ」なのです(箱の中には発色の良いドライフラワーが一緒に入っていたので「ちょっといいやつ」なのだと思います)。聞くところによるとロンドンの地下鉄がモデルになっているらしく、地下鉄の通っていない田舎住みの私は想像することしか出来ませんが、確かに大都市の夜空を思わせるような乾いた紺色の革のバンドに囲まれて華やかな繁華街のように輝くシャンパンゴールドで縁取られた白い文字盤は、私を大都市ロンドンの夜へ連れていってくれるように感じます。

その文字盤というのが、これまた都会のコンクリートのビル肌のような冷たく硬質な色気を放っているのです。白くて、ひんやりとしていて、細い2本の針と無表情な黒い数字が3の倍数だけをぽつりぽつりと素っ気なく告げています。きっと都会の夜の交差点ですれ違う女性はこんなふうなのでしょう。彼女はただ冷たいだけのひとではありません。バーで君の瞳に乾杯しちゃったりなんかすると、案外チャーミングでコケティッシュな可愛らしいひとなんだと分かるはずです。その文字盤の真ん中には、三日月型の小窓がついていてそこから可愛らしい5つのツノを持つ満点の星に彩られた夜空が見えます。この小窓は今宵の月の形をみる為のものです。30日間かけて丸くぷっくりとした小さな金の月が小窓を通過すると、毎日見える形が移り変わり、そうして私に月の形を教えてくれるのです。なんともお茶目で小粋な仕掛けではないでしょうか。

 

私は明日もまた、夜の街を駆け抜ける夜空色の地下鉄に乗って星のトンネルをくぐるのでしょう。黄金の朝日のピンバックルで夢に終止符をうって、なにかの野鳥の声が遠く響く田舎道を駆け出してゆく。明日も明後日も明明後日も、慌ただしく日々は繰り返します。